蜜月は始まらない
「花倉に話がある」



……えっ、早くも同居解消とか?

彼のセリフを聞いて、素で真っ先にそう思った。我ながら相当拗らせてしまっている。

おそらく顔をこわばらせている私に、何かを持った大きな手を柊くんがすっと差し出した。



「これ、俺名義の預金通帳とか証書。見せてなかったから」

「え……?」



視線を落とせば、彼が持っているのはたしかに某都市銀行の名前が入った数冊の通帳と証書だ。

若干戸惑ってしまいながら、再び柊くんを見上げる。



「えと、私、見てもいいの?」

「というか、見せなきゃダメだったろ俺。ふたり分の生活費、俺の給料で今後全部賄ってもらうことになるわけだし」

「そ、そっか……」



彼の言葉にうなずき、おそるおそる通帳類を受け取った。

ペラ、と印字のある最終ページをめくってその内容を確認した私は、思わずまたすぐにぱたりと閉じてしまう。

……お給料のケタが、違いすぎる……。

そうか、そういえば、去年の12月にテレビで観て知ってしまった彼の契約更改の年俸は、ほにゃららな金額だったな……わあ……こんな残高初めて見た……。

今の私、たぶん遠い目をしてしまっている。
この反応を多少は予想していたのか、柊くんは特に動じることなく口を開いた。



「まあ、全部が全部好きに使えるお金じゃないんだけど。税金のこととかは、また今度ゆっくり話す」

「うん……はい……」
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