デキる女を脱ぎ捨てさせて
「仕事に厳しい姿勢なのも急に甘くなります?
 何事にも真摯に向き合って地元の人達とも真剣に対応して、そういうのも全部なくなっちゃいますか?」

「花音……。」

「私はそういう崇仁さんが……。」

「うん。ありがとう。ありがとう。」

 隣から腕が伸びて抱き竦められた。
 すっぽりと覆われた体に私も腕を回す。

 ギュッと抱きついても足りなくて足りなくて、もどかしい気持ちで彼の胸に顔をうずめた。

「挨拶に行かなきゃね。」

 彼の言葉に私の声は驚きと戸惑いが混じる。
 
「本気ですか?」

 だって挨拶って倉林を出る出ないは置いておいて。

 うちの親もまぁいいの。
 お母さんはもう知ってるわけだし、お父さんなんて両手を上げて喜びそうだから。

 崇仁さんのご両親と言ったらフォレストの社長だ。
 どんな顔をして挨拶に行けば……。

「あぁ。本気。
 花音を捕まえておかないと。
 また逃げられては堪らないからね。」

「逃げませんよ。
 だいたい結婚願望ないんじゃなかったでしたっけ?」

 だから結婚の話題はタブーだと思っていたのに。

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