御曹司は眠り姫に愛を囁く
「入るぞ。瑛」

須藤さんはドアをノックして、取っ手を捻った。

「なんだ?陸翔」

ドアを開けると椎名さんは薄いフレームの黒縁眼鏡を掛けて、デスクの椅子に座って、ノートパソコンのキーを指で叩いていた。


「瑛、彼女が俺との付き合い・・・OKしてくれたんだ」

「良かったな。陸翔」

椎名さんは眼鏡を外し、友人の交際を一緒に喜ぶように口許を綻ばせた。

「ありがとう・・・貴崎さん」

椎名さんが私に礼を言う。


彼の言葉で、苦しさと切なさで心が染まっていく。
何とも言えないその想いに胸が張り裂けそうだった。


「仕事の方は順調か?」

「仕事のコト、すっかり忘れた・・・」

須藤さんは手許のタブレットを覗き、苦笑いして、リビングに舞い戻る。

「仕事中の邪魔して、すいません」

「いいんだよ」


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