World End 〜七情の泉〜
「魔導師長が張ってくださった結界に弾かれた父は森の奥深くへと消えてしまいました」

「え? じゃあお父さんは……」

「生きているかもしれないし、もう誰かの手によって命を落としているかもしれません。 父の安否は分かりませんが、弟は無事に帰ってきてくれました」

「そうなんだ……弟は無事だったんだね」



ホッとしていいのか分からなかったが、翼は安堵の表情を浮かべた。胸を撫で下ろし、少しぬるくなってしまったカモミールティーで喉を潤した。


今晩は風が強く、外の木が激しく揺れ動いている。


ティーカップを置いたところで翼は首を傾げた。



「あれ? 私のお世話じゃなくて他の人のした方がいいんじゃない?って話だったよね?」



若干頭がこんがらがってきた。現実の話だが、非現実的な話続きで脳が上手く働かなくなることが暫しある。


実のところ、今後はもっと適応できるようになるのだろうか?という不安も抱えていた。



「私は自ら救世主様_ツバサ様のお世話をさせて頂きたいと志願させて頂きました」



リタの笑みはとても堂々としたものだった。



「え!? なんで!? 救世主とか呼ばれてるけど、ハッキリ言ったら得体の知れない奴だよ!? そんな奴の世話するより、もっと王族と関われる仕事がいいんじゃないの!?」

「いいえ」

「…………」



リタは静かに首を横に振った。


即答で返され、翼はポカーンと口を開けることしかできなかった。これ以上何て言えばいいのか分からなかった。



「父を失い、家計を支える為、私は王宮で働く事にしました。 働くと言っても私は下級貴族ですから、どなたかにお仕えしたり、お客様のおもてなしをしたりなどの仕事ではなくて、厩や水回りのお掃除を担当しておりました」

「王宮の仕事って言っても色々あるんだね……」

「はい。 好んでする方は少ないようですが、私は家に使用人がおりませんでしたので、慣れっこでした。 ですからそれなりに楽しんでやらせて頂いておりました。 そんな時、ツバサ様がこの世界へいらっしゃいました」





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