World End 〜七情の泉〜
翼の後ろから追いかけて来るのは部屋の外に立っていた警備兵の2人。人は不思議なもので、追いかけられると逃げたくなるもので、翼は必死に走った。出口も分からない上に迷路の様な廊下。


燕尾服に蝶ネクタイを締めている執事たち、スカートがフワリと膨らむ黒いワンピースに白のフリルのついたエプロンを身に付けた侍女たち、警備兵や正装姿のひとたち…とにかくたくさんの人たちが翼と警備兵の追いかけっこに驚いている。そんな周りの目を気にする余裕もなく翼は必死に走った。


走りながら横目に見えた大きな広間。その先には何処の部屋よりも大きな両扉。もしかして…と思った翼は、下の階へと続く長く湾曲した手すりにお尻を乗り上げた。それを見ていた周りの者たちは目をギョッとさせた。みんなが呆気に取られている中、手すりに身を任せた翼は早々と下の階にたどり着き、その勢いのまま飛び降り着地を成功させた。


再び走り出した翼。大きな扉を警備していた2人が立ちはだかる。だが小柄な翼は隙間を難なく潜り抜け、力一杯扉を押した。


外の世界へ飛び出した翼は振り返ることなく走り続けた。脱兎の如く駆ける翼に追いつける者は誰一人としていなかった。





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