World End 〜七情の泉〜
お尻を浮かせて縮こまる様にその場に座り込んだ。膝を抱きしめるが震えは止まらない。指先も足先も冷たくて感覚が少しずつなくなっていく。そのおかげか、砂利や木の枝などで傷付いた足はあまり痛みを感じなかった。だが血が滲み痛々しい有様だ。


フーッと息を吐くと白く色がつく。


寒さや震え、痛み……どれも現実世界にいる時と変わらず感じられ、翼は不思議に思っていた。


俯き膝と腕の間から見える足の指を見つめた。どうしたものかと暗くてよく見えない足先を見つめていると、“カサカサ”と葉が揺れる音がした。顔を上げた翼は絶句する。


_く、く、熊!? こんだけ寒いんだから冬じゃないの!? 冬ってことは冬眠中なんじゃないの!?


突然の遭遇に言葉を失ったまま固まった。相手も仁王立ちのまま動きを止め、翼をじーっと見ている。固まりながらも翼は違和感を感じた。何故ならよく見ると、熊と思われた生き物の頭には一本の鋭いツノが生えているからだ。


翼の顔が青ざめていく。



「ぎ……ぎゃあああああ__ッッ!!!!」



恐怖を自覚した途端お腹の底から溢れる叫び声。それを合図に熊モドキは、鋭い爪を生やした腕を振り上げ物凄い速さで振り下ろした。


危機一髪のところで避けたが、スネの横にツーっと血が滲む。





< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop