World End 〜七情の泉〜
反射的に走り出す翼。無我夢中に体を動かしながらも、本能のまま逃げてしまったことをすぐさま後悔した。
およそ時速60キロで走る熊。ましてや化け物のような姿の熊に、いくら走るのが速いと言っても人間である翼が敵うはずもなく、直ぐに追いつかれてしまう。
「ヴォオオォォォオッッ__!!!!!」
翼は聞いたこともない雄叫びに驚いた。思わず振り向くと熊の化け物は翼に向かって飛び掛かってきていた。頭の中が真っ白になった翼は、咄嗟に頭を守るようにしゃがみ込んだ。目をギュッと瞑り、奥歯を噛みしめる。
次の瞬間、熊の化け物の首にキラリと光るものが通った。熊の化け物の鋭い爪と牙が翼に触れるよりも先に、熊の化け物の首が地面に転がった。遅れて大きな体も倒れこみ、ドサッ…という鈍い音が静かな森に響いた。
翼を背に庇うように立つ鎧を纏った男は劔に付いた血を振り払い、鞘に収めた。そして体をくるりと後ろに向け、片膝をついた。
「救世主さま、お怪我はございませんか?」
頭を抱え込む腕が耳まで塞いでしまっていて、男の声は翼に届かない。
男は翼の傷ついた足を見て眉間に皺を寄せた。
「失礼致します」
声が届いていないことを知りながらも一言断りを入れ、男は翼を横に抱きかかえた。
ビク!っと激しく肩を揺らした翼は、漸く頭から腕を離した。目をまん丸にする翼に対し、男は安心させるように微笑んだ。
およそ時速60キロで走る熊。ましてや化け物のような姿の熊に、いくら走るのが速いと言っても人間である翼が敵うはずもなく、直ぐに追いつかれてしまう。
「ヴォオオォォォオッッ__!!!!!」
翼は聞いたこともない雄叫びに驚いた。思わず振り向くと熊の化け物は翼に向かって飛び掛かってきていた。頭の中が真っ白になった翼は、咄嗟に頭を守るようにしゃがみ込んだ。目をギュッと瞑り、奥歯を噛みしめる。
次の瞬間、熊の化け物の首にキラリと光るものが通った。熊の化け物の鋭い爪と牙が翼に触れるよりも先に、熊の化け物の首が地面に転がった。遅れて大きな体も倒れこみ、ドサッ…という鈍い音が静かな森に響いた。
翼を背に庇うように立つ鎧を纏った男は劔に付いた血を振り払い、鞘に収めた。そして体をくるりと後ろに向け、片膝をついた。
「救世主さま、お怪我はございませんか?」
頭を抱え込む腕が耳まで塞いでしまっていて、男の声は翼に届かない。
男は翼の傷ついた足を見て眉間に皺を寄せた。
「失礼致します」
声が届いていないことを知りながらも一言断りを入れ、男は翼を横に抱きかかえた。
ビク!っと激しく肩を揺らした翼は、漸く頭から腕を離した。目をまん丸にする翼に対し、男は安心させるように微笑んだ。