おはようからおやすみを笑顔で。

家に着いてからも、ソファに座った状態でずっとボーッとしていた。

妊娠検査薬は買わずに帰ってきてしまったから、妊娠を確かめることも出来ない。

吐き気はおさまったし、つわりじゃなくて風邪だったのかもしれない。
……さっきまで〝妊娠したかも〟とうれしく思っていたのに、今は、妊娠を確かめるのがこんなにも怖くて、なんだか涙が出てくる。


……やっぱり私、子供が欲しいよ。
勿論、誰の子供でもいい訳じゃない。斉野くんとの子供が、欲しい。


だけど彼は子供は欲しくないかもしれなくて……。


そんなことを考えていると、家のインターホンが鳴った。

ハッとして慌てて玄関の戸を開けると、そこには斉野くんがいた。


「おい。いつも言ってるだろ。無防備に玄関開けるなよ」

「あ、う、うん。早かったね」

「ああ。予定より早く仕事終わったから」


そう言いながら、慣れた様子で部屋の中へと入っていく彼。

私の家へやって来る姿が、もうすっかり違和感なくて、そんなことにすらキュンとしてしまう自分がいる。


……だけど、妊娠のことはやっぱり切り出せず、辛い気持ちに上書きされる。


「どうした?」

リビングでスーツの上着を脱ぎながら、彼がそう言って私の顔を覗き込む。


「え、なにが?」

「顔色、悪くないか?」

「え……」

心配してもらえてうれしいはずなのに、私は思わず「そんなことないよ」と答えてしまう。
< 103 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop