おはようからおやすみを笑顔で。
「そうか? 熱ないか確認してもいいか?」

そう言いながら、彼の右手が私のおでこに向かってスッと伸びてくる。


……でも、その手が私に触れるよりも先に。


「……うっ」


私は、再び吐き気に襲われてトイレに駆け込んだ。


「おい。大丈夫か?」

心配そうに、彼が私の背中をさすってくれる。
さっきよりは軽く吐いただけだけれど、吐いても気分はスッキリせず、辛い。


「沙耶、風邪ひいてるのか?」

「……ううん」

「なにか変なもの食べたか?」

「……昨日も今日も、そんな心当たりないよ」


なんで? 私の心配をしてくれるのはうれしいけど、なんでさっきから妊娠の可能性を疑わないの?


やっぱり、子供なんていらないから? 子供が出来たら嫌だからそんな可能性ないことにしてるの?


……そんなの、酷いよ。



「……これ、多分つわりだと思う」


だから、言ってしまった。私だけが悩んでいるのが嫌だったから。


「妊娠、してるかもしれはい」


そう伝えると、斉野くんは二秒間くらい固まる。
そんな〝予想外〟みたいな反応、やめてよ……それとも、固まってしまうほどショックなの?


すると彼はゆっくりと口を開き……



「なにを勘違いしてるんだ」

「へ?」

「言わせるな、恥ずかしい」

「え、え?」

「……避妊しなかったことなんて、ないだろうが」


……んん?
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