おはようからおやすみを笑顔で。
「そう。付き合っーー」

「いやいやいや! 店の前でバッタリ会っただけ!」

斉野くんの言葉を、思わず盛大に遮ってしまった。
斉野くんからの睨まれるような鋭い視線を感じた気がしたけれど、私は周囲に冷やかされたりするのが大の苦手なので、こんな軽いノリで肯定は出来なかった。
それに、実際まだ付き合ってはいない。キスはしたけれど……。


すると部屋の奥の方から、

「祐!」

と、聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。


声と共に現れた凛花ちゃんは、先日カフェで会った時よりも一段とバッチリメイクで、髪はゆるふわ巻きされている。膝丈のミニスカワンピースは、私が着たら絶対に不恰好になるだろうけれど、脚の長い彼女にはぴったりお似合いだ。


「祐、久し振り! 会いたかった!」

満面の笑みを浮かべながら、斉野くんにストレートにそう伝える凛花ちゃん。
きっと本当に会いたかったのだろう……とはわかるのだけれど、なんか、斉野くんにくっつきすぎじゃない? そんなに腕にぎゅっとしがみつく必要あるかな? ていうか、胸くっつけてない?


「おい、離れろよ」

斉野くんが困ったような、少し怒っているような、そんな表情をする。
彼を助けようとしてーーという訳ではないけれど、私は二人の間に割り込んで「凛花ちゃん、この間ぶりだね」と挨拶した。なんとなく、二人きりで会話を続けてほしくないと感じたから。


だけど凛花ちゃんは、一瞬だけチラッと私に視線を向けて「……ああ、うん」と答えるのみ。
すぐに再び斉野くんの顔を見つめながら、彼に対しては笑顔で話し始める。


……んん?

私、凛花ちゃんになにか悪いことしたかな、と考えてみるけれど、最後のやり取りはメッセージアプリでの

【斉野くん、来るって】

【マジで⁉︎ サンキュー!】

だったはず。これといって怒らせる要素はなにもない。
< 63 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop