戦乱恋譚
「はっはっは…!!よくやった、佐助!それでこそ月派の折り神だ!」
高笑いをする十二代目。綾人が、動揺しながらも男を睨み、問い詰めた。
「どうして、佐助を利用した…!あいつは俺の折り神だぞ!」
すると、十二代目は目を細めて答える。
「綾人。お前はさぞ、この折り神から慕われているようだな。“命に背けば主を始末する”と言った途端、これだ。見上げた忠誠心だよ。」
「…!」
綾人の顔が怒りでこわばった。この男は、汚い手を使って佐助を脅し、彼に折り神の術を使わせたのだ。
(なんて卑怯な…!)
「華さん!」
「っ!」
その時。鳥居の向こうから、びしょ濡れになった伊織と、彼についていた千鶴と花一匁が駆けてきた。
霊力を感じてここまできた様子の彼らは、状況を察した瞬間、顔色を変える。
すると、境内に十二代目の低く不気味な声が響いた。
「さぁ、やっと顕現録が我が手に入った…!今、この場で“最強の折り神”を顕現してやろう!」
「「!!」」
全員が目を見開いた次の瞬間。
ブワッ!と月派の霊力が辺りに放たれた。
「“神聖なる式神様。力を持って依り代に宿り、我に仕えよ。”」
そう言った十二代目が羽織から取り出したのは、“龍”の依り代。
彼の手の中の顕現録が、パラパラと物凄い速さで自然にめくれていく。
…と、ある一ページが開かれた瞬間、光を帯びた陣が、どくん!と大きく脈打った。
「“折り神、顕現!”」