戦乱恋譚
ぱちり、とまばたきをすると、彼はすっ、と着物の懐から分厚い手帳のようなものを取り出し、私の前に差し出した。
ぱらぱらとめくると、そこに記されていたのは筆で描かれたいくつもの“絵”。
「陰陽師は“折り神(おりがみ)”と呼ばれる自らの術を込めた駒…いわば、“式神”を使うんですが、この顕現録は、代々陽派が守ってきた、折り神をこの世に呼び出すための方法を記した大事な書物なんです。」
(…折り“神”…?)
彼曰く、この顕現録に描かれた絵の通りに和紙を折って術を唱えると、そこに折り神という神が宿って人として顕現するらしい。
しかし、月派との争奪戦に勝ってこの書を得たはずの彼の表情は暗い。様子を伺っていると、伊織さんは弱々しく語り始めた。
「…実は、月派の当主に、“依り代”の折り方のページを奪われてしまったのです。折り神を呼び出すための名と形が分かっても、依り代の折り方が分からないなら意味がない。」
悔しげに顔を歪める彼は、ぐっ、と顕現録を待つ手に力を込めた。ため息をつく彼を気遣っていると、私の目にあるページが止まる。
「…あ!これって、“鶴”ですか?これなら伊織さんでも折れるんじゃ…?」
「え?」