戦乱恋譚
私を庇うように前に立った伊織さん。素性を隠して答えた彼に、綾人は怪訝そうに顔をしかめた。
「まぁ、どちらにせよ俺には関係のない話だ。…顕現録を渡せ、伊織。そうすれば、お前も女も見逃してやる。」
(…!)
背中越しに見えた綾人の目は、本気だ。腰に下げる彼の刀が、チキ…、と音を立てる。
「…やだ…、と言ったら…?」
緊張感の漂う中、伊織さんが小さく呟く。
…と、次の瞬間だった。
タン!
綾人が地面を蹴ると同時に、一気に間合いを詰めた。落とした短剣を拾い上げた伊織さんが、すんでのところで刃を受け止める。
ガキン!!
拮抗する力。ギリギリと鳴る刃が震えている。キン!と弾いた伊織さんは、素早く体を反転し、相手の懐に斬り込んだ。
流れるような殺陣。まるで時代劇を見ているようだ。だが、ここは現実。切れた肌から流れる血も、彼らの持つ武器も本物だ。
殺し合いをしているはずなのに、綺麗で無駄のない動きに目が離せない。攻撃力で優っている綾人を、読みの速さと技の質で躱す伊織さん。お互い一歩も引けを取らない。
…と、勝負が長引くかに見えた
その時だった。