戦乱恋譚
バサッ…!
(!)
ふいに頰に風を感じ、ゆっくりとまぶたを上げた。
その瞬間、目の前の光景に言葉を失う。
…純白の着物に、すらりとした手足。
白銀の髪が夜に映え、月明かりに照らされたその姿は、まるで本物の“鶴”のようだった。
真っ赤な折り鶴のピアスが、耳元で揺れている。
───タン。
地面に降り立った“彼”は、ゆっくりと私を見下ろした。
私でさえ肌で感じるほどの神聖な霊力。彼から目が離せない。
深紅の瞳が、わずかに細められた。
『───呼んだか?姫さん。』
どくん…!
綺麗に弧を描いた彼の薄い唇。
好戦的な笑みに、心臓が高鳴る。
「姫…?!」
『折り神が呼び出した主(あるじ)を姫扱いするのは当然だろ?男だったら、当主様だけどな。』
そういう呼び名のルールが、折り神の中にはあるらしい。二十五歳にもなって、そんなキラキラした呼称で呼ばれるとは。
「…あなたが…鶴の折り神…?」
ぽつり、と口から出た問いに、彼はふっ、と笑った。
『あぁ。…俺の名は“千鶴(ちづる)”。神城家で最初に作られた、始まりの折り神だ。』
月夜に照らされる白銀の髪が、さらさらと揺れる。思わず見惚れていると、千鶴がちらりと辺りに視線を向けて続けた。
『…で?数十年ぶりに呼ばれてみれば、これは一体どういう状況だ?なんかの祭りか?』
「ち、違うよ!殺されかけてるの…!」