戦乱恋譚
すると、はっ!と目を見開いた男性が、素早く私に駆け寄る。
「こ、これは伊織様の霊力…?!なぜこの女性が?!」
その声を聞き、倒れていた伊織さんが、むくり、と起き上がった。動揺を隠せない男性に、当主は顔色一つ変えずに言い放つ。
「綾人の術にかけられて、俺の霊力が彼女に移ったんだ。だから、代わりに折り神を顕現して貰ったんだよ。」
「な、何ですと?!」
男性は、ここでやっと純白の着物を着た青年の正体に気がついたようだ。額を押さえた彼。どうやら、頭痛が始まったらしい。
「…伊織様の側近を務めて十年…。まさか、目を離した隙に、こんなことになるとは…!」
大きな衝撃を受けている様子の彼。
…当たり前だ。どこの馬の骨かも分からない素性不明の女が、家の未来を担う当主の霊力を奪っていたのだから。
「伊織様。これから、どうするおつもりですか?当主が霊力を失ったなどと町の民に知られれば、神城家の権威は失墜しますぞ…!」