戦乱恋譚
彼の人望の厚さに、しみじみとしていると、一番の“忠臣”が廊下の向こうから歩いてきた。
「!華さま。何をしておられるのですか?」
声をかけてきたのは、書類の束を抱えた咲夜さんだ。私は、使用人たちに挨拶をして回っていることを説明し、彼らにしたのと同じ問いを咲夜さんに投げかける。
「“私から見た伊織様”、ですか。」
「はい。…ここだけの話、私はまだ伊織のことをよく知らないので。少しでも聞けたらいいなと思って。」
すると、咲夜さんは眉を寄せて低く呟いた。
「あの方は穏やかそうに見えて、実は頑固で熱いお方です。自分で決めたことは何が何でもやり通そうとしますし…そのせいで一人で無茶をすることも多々あります。」
さすが、彼の側近だ。他の使用人から聞けない伊織の一面をさらり、と教えてくれる。その時、咲夜さんは一瞬表情を曇らせて、ぼそり、と言った。
「…今日だって、地方の小さな派閥同士の争いを鎮めるために、一人で戦地に赴いていますからね。」
「えっ!」