戦乱恋譚
私の反応に、咲夜さんは、はっ!と口をつぐんだ。まさか、知らされていなかったのかと言わんばかりの顔だ。
「どういう事です?“一人で戦地に”?霊力を持たない今の伊織がそんな所へ行くなんて…大丈夫なんですか?」
すると、彼は小さく息を吐いて答えた。
「力のない派閥の小競り合いなら、刀だけで十分戦えるほどの実力をあの方は持っています。一人と言っても、千鶴がついて行きましたからね、“戦力は”問題はありません。」
含みのある言い方に眉を寄せると、咲夜さんは静かに続ける。
「…それに、伊織様は止めても無駄なんですよ。“自分の生き方は自分で決める”、といつも流されてしまいますから。」
それは、どこか寂しそうな響きだった。彼の表情に戸惑っていると、咲夜さんは「…余計なことを言いましたね」と咳払いをし、弱々しく笑った。
「伊織様のこと、よろしく頼みますね。」
そう言って、すっ、とお辞儀をした彼は、そのまま仕事に戻っていった。