戦乱恋譚
その問いにすぐ答えるほど馬鹿ではない。この男は、さっき私を殺そうとした人だ。
すると、私の心中を察したような彼が、カラン…、と短剣を地面に落とす。思わず目を見開くと、彼はまっすぐ私を見つめて続けた。
「そんなに警戒しないでください。もう、貴方を傷つける気はありません。信用出来ないなら俺から名乗ります。…俺は神城 伊織(かみしろ いおり)。陽派の十三代目当主です。神城家の名は知っているでしょう?」
「…?」
聞いたこともない名だ。容姿端麗だが、芸能人というわけでもないらしい。私が無知なだけで、世間では有名な家柄なのだろうか?
すると、さらに驚いた様子の彼が私に言った。
「まさか、この国に神城家を知らないものがいるなんて…。ここら一帯の陰陽師の派閥といえば、神城家の“陽派(ようは)”と、本条(ほんじょう)家の“月派(つきは)”の二大勢力なのに。」
「お、陰陽師…??」