戦乱恋譚
ブワッ!
「「!」」
突然、境内に突風が吹き荒れた。風と共に、“忍び装束の少年”が現れる。
(!まさか、あれは…?!)
ずっと探していた折り神かと思い目を輝かせたが、伊織は何かを察して顔色を変える。
「あれは、月派の…!」
(え…?)
伊織が何かを言いかけた、次の瞬間。鳥居の向こうに、見覚えのある青年が見えた。威圧するような冷めた視線が私たちを見据える。
漆黒の髪に、透き通るような碧眼。
まさしく、彼は月派の十三代目当主、綾人だった。こちらに近づく綾人に、少年が、ぱっ!と飛びつく。
『綾人さま!この人が、顕現録を持つという、“華”ですか?』
「あぁ。…手短に済ませるぞ、佐助(さすけ)。」
(“佐助”…?)
すると、彼らを警戒する伊織が素早く私に耳打ちした。
「あの少年は佐助といって、綾人が昔顕現した“手裏剣”の折り神です。」
「えっ…!!」
(顕現録は、ずっと陽派の城にあったんじゃ…?)
伊織は、そんな私の心中を察して言葉を続ける。
「実は、綾人は、元は神城家の使用人だったんです。父がまだ生きていた頃は、俺と共に陰陽師の修行を受けていましたが…月派の養子に迎えられ、彼は佐助を連れて陽派を抜けました。」