戦乱恋譚
その時、初めて綾人と対峙した夜の記憶が蘇る。
“…お前も、当主になったのか?”
“あぁ…。もう、お互い、昔のような無邪気な関係ではいられない。”
伊織の問いに、彼はそう答えていた。
威嚇し合う霊力。かつて幼馴染みだったといえど、敵対するニ派の当主となった彼らにとって、“情”なんてものは、しがらみでしかないのだ。
すると、綾人が碧眼を鈍く輝かせ、高らかに叫ぶ。
「佐助!あの女から、顕現録を奪え!」
(っ!)
声を合図に地面を蹴る佐助。目にも留まらぬ速さで距離が縮まる。さっ、と彼が懐から取り出したのは、鋭く尖った“手裏剣”だった。
血の気が引いた途端、私の体を、ばっ!と伊織が抱き抱える。
シュン、シュン、シュン!
風を切って襲いかかる手裏剣。紙一重で躱す伊織は、的を狙わせないように素早く動き回る。
防戦一方の状況に、焦りが募ったその時。佐助が、忍び装束から“キセル”を取り出した。二つに分かれた中から現れたのは、研ぎ澄まされた刃。
(まさか、“隠し刀”…?!)
不意をつかれた伊織が目を見開く。
(やられる…!)
…と、ぎゅっ、と、伊織にしがみついた
次の瞬間だった。