戦乱恋譚
先代から命令された佐助は、はっ!と綾人を見た。戸惑うような視線を見て、先代は苛立ったように声を荒げる。
「私の命令が聞けんのか!お前の主は、私の駒だぞ!」
『…!』
佐助は、迷いを振り切るように駆け出した。その瞳は、敵意に満ちている。
「きゃっ!」
一瞬で背後を取られ、血の気が引いた。捨て身の佐助は、ギリ…ッ、と私の腕を掴む。
(痛ッ…!)
「華さん!!」
伊織の緊迫した声が聞こえた。
その瞬間、境内に敷かれた月派の黒い陣。十二代目が、霊力を放ち始める。
「?!何を…!」
綾人が、目を見開いたその時。地上の陣から、花火のように漆黒の矢が空に放たれた。その切っ先は、一直線に私に向かって降り注ぐ。
私の腕を掴む佐助も、絶句した。
(まさか、佐助ごと…?!)
伊織と千鶴は式神に阻まれ、虎太くんの光の壁も再生が間に合わない。
背後から、怯える呼吸が聞こえた。
一瞬緩まった拘束の力。とっさに、佐助を抱きしめた。
『っ?!』
目を見開く佐助。伊織の叫び声が響き渡った。
「やめろーっ!!!!」