戦乱恋譚
どきん…!
思わず、彼の桃色の瞳に見惚れた
その時だった。
「は、花一匁だと…?!何故、あんな格の高い折り神が、陽派の女に…!」
狼狽えた十二代目が、揺れる瞳でこちらを見た。仕留めたと思っていた私が生きていて、さらに新たな折り神が現れたことに動揺を隠しきれないようだ。
すると、花一匁がカッ!とその瞳を輝かせた。
ブワッ!!
辺りに衝撃波が広がり、境内に群がっていた月派の式神が、紙切れとなって吹き飛んだ。
敵とみなした霊力を一瞬で消し去る彼の力に、綾人だけでなく、味方の伊織達まで目を見開く。
『さぁ、姫。俺に命じてみろ。』
「え?」
『お前が望めば、二秒で奴の息の根を止めてやる。』
映画でも聞いたことがないような、相当物騒な台詞が聞こえた。殺気を向けられた先代も、顔色を変えて悔しげに歯をくいしばる。
消し飛んだ自分の式神に眉を寄せた先代は、バサリ、と黒い羽織を翻し、その場から逃げるように姿を消した。
辺りが、しぃん、と静まり返る。
「佐助!」
綾人が、そう折り神の名を呼んだ。私の腕から離れた少年は、主の元へと駆け寄っていく。
すっ。
私を一瞥し、頭を下げた綾人は、ふわり、と霊力を纏ってその場から去っていったのだった。