戦乱恋譚


(…助かっ、た…?)


体の力が、ふっ、と抜ける。

…と、その時、血相を変えた伊織が、私の元に駆け寄った。


「華さん…!」


肩を力強く掴まれる。驚いて彼を見上げると、震えるほど不安げな瞳をした伊織が、すがるように口を開いた。


「すみません、俺に力がないばかりに…!怪我は?矢に、どこを射られたんです?!」


「だ、大丈夫…!どこも痛くないよ。花一匁が守ってくれたから…」


取り乱す伊織は、それを聞いて、ふっ、と手の力を抜いた。

そのまま、こつん、と私の肩に頭を乗せた彼は、ぼそり、と呟く。


「…不安で…息が止まるかと思った…」


「!」


「…無事でよかった……」


心から安堵するような声に、私も、伊織の背中を抱く。彼の感触を確かめるようにゆるゆると撫でていると、千鶴のからかうような声が耳に届いた。


『もしもーし。…そういうのは二人っきりの時にしてもらえねぇかな。』


「「!」」


我に返った様子の伊織が、ばっ!と私から離れた。彼の頰が少し赤い。

すると伊織と入れ替わるようにして、虎太くんが、ぎゅっ!と私に抱きついた。


『ごめんなさい、姫さま…!ぼくの力が負けたせいで怖い思いをさせて…っ!』


「ありがとう、虎太くん…!私は大丈夫だから。」


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