戦乱恋譚

その言葉を聞き、わんわんと泣きじゃくる虎太くん。私は、そんな彼をなだめながら、改めて花一匁を見上げた。


「本当にありがとう。貴方が来てくれなかったら、私は今頃、本当に殺されていたかもしれない。」


『あぁ。…あのままでは、佐助とやらも依り代を矢で射られて、消滅していただろうな。』


(え…)


びくり、とすると、千鶴が真剣な瞳で呟いた。


『折り神は、どれだけ傷つけられても大抵のことじゃあ死んだりしないが、体の中にある依り代を壊されたら、もう一度作り直したとしても、二度と顕現出来なくなるんだ。』


(…!そうだったんだ。)


すると、伊織が険しい顔で千鶴に続く。


「陰陽師なら、誰でも知っていることのはずです。…なのに、あの男は佐助を見殺しにしようとした。やはり、顕現録を何としてでも守らなければ、折り神たちが捨て駒のように先代に利用されてしまいます。」


…本条 宗一郎が、佐助もろとも私を消そうとした時、本当に信じられなかった。私利私欲のために仲間を簡単に捨てる男が、この世にいるなんて。

私は、着物の中に忍ばせた顕現録を、ぎゅっ、と抱きしめる。


『…そう固くなるな、姫。俺が顕現したからには、次こそあの男の息の根を止めてやろう。』


「…。」


平然と言い放つ花一匁に、一同が目を細めた。冗談に聞こえないところが怖い。

…こうして、私たちは新たな仲間を連れて、神城の屋敷へと帰ったのです。

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