戦乱恋譚


「伊織様!一杯いかがですか?」


使用人たちが、彼の周りに集まってきた。目を丸くする伊織は、ふっ、と笑って盃を差し出す。


(お酒が苦手、ってわけじゃなさそう。…まぁ、伊織が笑っているから、いいか。)


その時、そっ、と伊織に近づいた銀次さんが、彼に何かを耳打ちした。

伊織は、小さく頷き、盃を机に置く。


(…?)


そんなやり取りを不思議に思って見ていたその時。使用人の女性が、私の側へやって来た。


「華さまも、一杯どうですか。」


「…あ、いただきます!ありがとうございます。」


盃に注がれていくお酒。一人が来ると、また一人、と挨拶がてら私の元へ集まってくる。


「華さま、ささ、一杯!」


「あ、私も!華さまとお話ししてみたいと思っていたんです。」


わらわらと集まる彼らに、押され気味になる。ペコペコしながら彼らの酌を受け入れていると、だんだん意識がぼーっ、としてきた。


(や…やばい、酔ってきたかも…)


お酒の席は、久しぶりだ。なんだか、酔いの回りが早いらしい。

やがて一人になり、ふわふわと気持ちいい感覚に襲われた時、私はがくん、と机に突っ伏したのだった。


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