Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 それからは千紗子はいつも以上に仕事に集中した。
 少しでも時間が合うと、裕也のことが頭をよぎる。その度に胸が痛むから、思い出す暇がないように次々と業務をこなす。
 
 裕也のこととは別に、千紗子が仕事の手を止められない理由がもう一つあった。

 雨宮だ。

 同じ空間に雨宮がいると、なんとなく目で追ってしまう。千紗子の視線に気付いた雨宮と目が合って、千紗子は反射的に目を逸らす。
 幾度かそんなことがあって、千紗子は自分の変化に戸惑っていた。
 今まではそんなことはなかったのに、どうしても雨宮の存在を無視することが出来ない。
 そんな自分が千紗子は信じられなかった。

 (私、今までどうしてたっけ……)

 考えれば考えるほど分からなくなるので、千紗子はとうとう思考を手放すことにした。

 (よそ見なんて出来ないくらい仕事をすればいいのよっ。)
 
 乱暴な方法だが、今の千紗子にはそれしか思いつかなかった。


 それからは一心不乱に仕事に集中した。 
 少しでも手が空けば、先輩の仕事を肩代わりしたり、困っている利用者がいれば自分から声を掛けた。

 ひと時も止まることなく働き続けた千紗子は、昼過ぎには体が重くなってしまっていた。
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