Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 
 昼休憩を終えて午後二時から、例のイベントのミーティングが行われた。
 地元出身の絵本作家によるそのトークイベントは、二週間後の土曜日に迫っている。
 今日は担当メンバー全員が集まって、準備の進行状況の報告やこれからの段取りを話し合うことになっている。

 「それではミーティングを始めましょう。」

 ミーティングを進行するのはチームリーダーである雨宮だ。
 会議室のホワイトボードの前に立つ雨宮の前には、会議用の長テーブルが向かい合わせに組んであって、千紗子を含めた六人のメンバーが座っていた。

 千紗子は一番後ろの席で、前に立つ雨宮を見ていた。

 (ミーティングだと、特に気にせず雨宮さんを見ることが出来るんだわ…)

 全員が前に立つ雨宮を見ているので、千紗子が彼を見ていても不自然ではない。
 目の前に立つ彼は、真面目な顔で資料を読み上げている。
 それは今までここで見ていた彼の姿のままだ。

 隙の無い仕事の姿。
 
 (そうよ、これが私の知ってる雨宮さんだったはずだわ…)

 この二日間で見た、雨宮の仕事とは全く別の顔が、千紗子の脳裏を霞めた。

 (あ、だめ。今、思い出したら…)

 千紗子の意思と反して、頬が熱くなっていく。

 「…のした、木ノ下。」

 「は、はいっ!」

 自分を呼ぶ声に、千紗子はハッとして顔を上げると、メンバー全員が自分を見ている。

 「どうした?さっきから呼んでるぞ。具合でも悪いのか?」

 問いかける雨宮に、隙は無い。

 「い、いえ、大丈夫です。すみませんでした。」

 「それならいいが、ミーティング中にぼうっとしないように。次は木ノ下の栞の説明だ。よろしく頼んだぞ。」

 「は、はい。」

 雨宮に注意されて、千紗子は恥ずかしくなりながらその場で立ち上がる。
 顔が赤いのを不自然に思う人は誰もいなかった。
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