Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
定時を少し過ぎた午後六時前。
千紗子は職員専用出入り口の扉をゆっくりと押し開けた。
(やっと終わった……)
色々な要因で精神的に乱れっぱなしの今日一日は、純粋に業務だけで忙しい日より何倍も疲れるものだった。
雑念を振り払うべく自分で仕事を増やしていたのもあったけれど。
(雨宮さんにはタクシーで帰って、て言われたけれど…)
千紗子は帰りに駅前のにあるスーパーで買い物をして帰ろうと思っていた。
あそこなら百均の店もあるし、雨宮の家で数日間料理をする為に足りないものを買うのに良いと、朝から決めていたのだ。
この図書館は、市役所や保健センターなどの行政施設や、体育館や市民会館などの公共施設が、今朝通って来た公園をぐるりと囲む形で集められている一角にある。
その為夕方のこの時間はバスの本数も多く、とりわけ駅に向かうバスは、あまり待たなくても良い間隔でやってくるのだ。
千紗子がバス停に着くと、ちょうど駅に向かうバスがやってくるところだった。
(良かった。あまり混んでないわ。)
タイミング良くバスに乗れた上に乗客もそんなに多くなく、千紗子は運よく座席に座ることが出来た。
疲れた体にバスの揺れが心地良い。
窓の外を眺めながら、千紗子はぼんやりと物思いに耽った。
(私、今まで雨宮さんの前でどんなふうにしてたかしら…。)
今日一日、彼の前で挙動不審だった自覚はある。
二日前に仕事をした時までは全然平気だったのに、同じように振る舞えない自分が情けない。
(プライベートだけじゃなくて、仕事の時まで迷惑を掛けることだけはしたくないのに…)
公私混同なんて絶対にしないように気を付けなければ、と千紗子は自分に言い聞かせた。