Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
‟パタン”
リビングのドアが閉まると、雨宮は「ふうっ」と息をつく。体から力を抜ける。無意識に体に力が入っていたのだと、雨宮は気が付いた。
(今夜はダメだな。)
自身にダメ出しをした雨宮は、数時間前のことを思い返した。
雨宮が遅番を終えて帰宅すると、ソファーで千紗子が眠っていた。
風呂は済ませたようで、化粧を落とした彼女の寝顔があどけなく、昼間よりも幼く見える。
昨日雨宮が貸したスエットを着ている千紗子の、数回捲り上げた袖や裾から出た真っ白な腕や足が妙に艶めかしく映って、雨宮は無理やりそこから視線を剥がした。
帰宅した途端、好きな子のそんな無防備な姿を見た雨宮は、眉を寄せて「はぁ~っ」と息をついてから、ブランケットを取りに書斎へと向かった。
(起きてる時は俺がちょっと触れるだけでもすぐに警戒するのに、こんなところで無防備な姿を晒すなんて…千紗子は無自覚だが小悪魔かもしれないな…)
さっきの溜め息は自分の理性を取り戻すためだ。
(千紗子にこの家でリラックスして過ごしてほしい。彼女をこれ以上追い詰めるようなことはしたくない。)
ただでさえ深く傷付いている千紗子を、これ以上傷付けることなんてあってはならない。しかもそれを自分がするなんて、雨宮は耐えられない、と思う。
(俺が理性を失ってしまったら、きっと彼女はすぐにでもここを出ていくだろうな。)
雨宮はブランケットを手に取って踵を返すと、ソファーで寝ている千紗子の所に戻った。