Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
寝室のドアを開けてリビングに行くと、電気が消されていた。
(雨宮さんは書斎?もう寝てしまったのかしら…)
雨宮はもう少し仕事をする、と言っていた。
千紗子が寝室に入ってから、まだ十数分しか経っていない。
千紗子はすこし思案してから、書斎へ向かった。
‟コンコン”
書斎のドアを控えめにノックする。少し待ってみるけれど、中から返事は聞こえない。
(もう眠ってしまったのかしら……)
寝ているところを起こしてまで言うほどのことではない。
千紗子は諦めて寝室に戻ろうと、足を返そうとした時、小さな音を立ててドアが開いた。
「…千紗子?」
開いたドアの向こうに雨宮が立っている。
「すみません、起こしてしまいましたか?」
「いや、寝てはいないよ。少し資料を読んでいたから。」
雨宮の向こうに書斎用のデスクが見える。
開いたノートパソコンと分厚い本が開かれている。デスクの隣には大きな本棚が有って、沢山の本が並んでいた。
「どうした?何かあったか?」
雨宮の声に、千紗子は慌てて視線を部屋の奥から目の前の彼へと戻した。
「あ、えっと、大したことではないのですが、明日は雨宮さんは遅番でしたよね。明日は私はバスで行きますので、ゆっくりしてください。」
「ああ。そのことをわざわざ言いに来てくれたのか?」
「本当は食事の時に伝えようと思っていたのですが、忘れてしまっていたので。」
「ありがとう。でも、明日は早番に変更したから千紗子と一緒に行き帰りできるぞ。」
「えっ!?」
「朝一番に会議が入ったんだ。午後からは特に別の用事はないし、早番で帰ることにしてある。」
「そうだったんですね…」
「人目が気になるなら、今朝下ろしたところまでにするから。」
微笑む雨宮に、なんと返して言いか分からなくて、千紗子は視線をさまよわせる。
視線をあちこちに移動させた時、不意に書斎の中の一角が目に留まった。