Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 飲み終えたミルクティのカップをシンクの中に置いた時、今しがた無くなった牛乳パックが千紗子の目に入った。

 「牛乳、買っておかないと。」

 マンションのすぐ前にあるコンビニに行こうと思った。

 ここに越してきてからすっかりコンビニのお世話になりっぱなしだ。駅前のスーパーに行けばコンビニで買うよりも何割か安い値段で同じものが売っている。けれど今の千紗子にはまだ、雨宮と遭遇してしまいそうなところに行く勇気がもてないでいる。もっともあの雨宮とスーパーで遭遇する確率がものすごく低いことを分かっているのだけど。


 千紗子は財布と家の鍵だけをコートのポケットに入れて、部屋の外に出た。
 マンションのエントランスから出ると、穏やかな朝陽が千紗子の背中に当たる。

 時刻は八時前。目の前の歩道を通勤で駅に向かう人が足早に過ぎていく。
 千紗子が片側一車線の狭い道路を渡ろうと左右を見渡した、その時。

 向こう側の歩道の人の波の中に、その人はいた。

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