Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
反射的に街路樹の陰に身を隠すと、その姿を樹の脇から盗み見る。
道行く人の波から、頭一つ分飛び出た姿。
スーツにコートを羽織った仕事の時の姿ではなく、細身のパンツの上にファーのついたフードジャケットを羽織り、掛けているのは太いフレームの眼鏡。
十数メートル離れた所にいる千紗子の目に、彼のその姿だけが切り取ったようにはっきりと映った。
「雨宮さん……」
千紗子の口から、その名が自然とこぼれ落ちる。
彼の姿を目で追っていると、彼の隣に並んで歩くもう一人の姿が目に飛び込んできた。
雨宮の奥には、髪が長くい綺麗な女性がいた。
背の高い彼と並んでも遜色ないスラリと伸びた背。遠目に見ても分かるほど小さい顔に長い脚。モデルと言われても驚かないくらい整ったプロポーションを持ったその女性は、雨宮を見上げながら楽しそうに笑っている。
笑いかけられた雨宮が、苦笑を浮かべながら、隣の彼女の頭をポンっと叩くように撫でた。
それを目にした時、千紗子の胸はこれまでにないほどひどく絞り上げられた。あまりの痛みに息が止まりそうになる。
これ以上彼らの様子を見ていられず、千紗子は踵を返してマンションに駆け戻った。