Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
もうすぐ駅の高架をくぐる、その時になって、千紗子は自分の後ろからずっと同じ足音が着いて来ていることに気付いた。
途端、千紗子の全身がぞわりと粟立つ。
今日はあの嫌な視線を感じなかった、と千紗子は思っていた。けれど、本当はそれに気づく余裕すらなかったのかもしれない。
千紗子の足が速くなる。けれど後ろの足音も同じように速くなっていく。
(こわい……)
小走りに近い千紗子の足音が、薄暗い高架に響く。
駅の反対側は繁華街で明るい。帰宅を急ぐ人達が交差するように歩いていて、その波をくぐるように縫いながら、千紗子は自宅のマンションまで一直線に足を進めた。
あと少しでマンションに辿り着く。
千紗子の緊張が一瞬緩んだ、その時だった。
彼女の腕が、何者かによって掴まれた。