Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 北欧調のインテリアの店内は、そこかしこがクリスマス仕様になっていてとても可愛らしい。ところどころに飾られたキャンドルの明かりが、クリスマスイブの夜を優しく包み込むように照らしている。

 控えめな音量で流れるクリスマスミュージックを聞きながら、千紗子はゆっくりと紅茶を味わっていた。

 一彰が本を広げたのは自分を急かさないためだと、千紗子はとうの昔に気付いている。

 彼と付き合い始めてまだ日は浅いけれど、こういうふうに隣で別々のことをしているのに決して寂しくなどなくて、むしろ落ち着く気持ちになれるのが、千紗子は不思議だと思っていた。

 家にいる時、ソファーで千紗子が読書をしている傍らで一彰がパソコンを広げて仕事をする時もあれば、逆の時もある。
 お互いがお互いの集中を邪魔することはなく、でも千紗子がふと顔を上げると彼も千紗子の方を見て、軽いキスをくれたり頭を撫でたり、まるで風が木々を揺らすのが当たり前のような自然な仕草で、一彰はスキンシップを取ってくるのだ。

 千紗子の方はまだそれに慣れずにその都度顔を赤くしてしまうのだけど、なんだかんだで彼の隣にいるのがどんどん心地良くなっていて、離れがたい気持ちになるのを止めることが出来そうにないのだった。 


 空になったカップをソーサーの上に戻したカチンという音の後、隣で静かに本が閉じられた。

 「そろそろ行こうか?」

 「はい。」

 立ち上がる千紗子の手を、当たり前のように一彰が取って、さりげなくエスコートする。
 扉の手前のレジで千紗子が会計をしようとすると、一彰によって既に支払われた後だった。

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