Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「気に入ったみたいで良かった。でも庭ばかり見ていたら冷えるから、そろそろ中に入ろうか。」

 笑いを堪えながら言う一彰の声に、千紗子はハッとなって庭に釘づけになっていた視線を前に戻した。

 「ご、ごめんなさい。一彰さんが寒いですよね。」

 寒い中一彰を待たせてしまったこと気付いた千紗子が、慌てて謝ると、一歩前にいた彼は千紗子にそっと手を差し伸べた。
 その手の平におずおずと自分の手を重ねる。
 千紗子の冷たい手を包み込むように握った一彰は、優しく千紗子の体を引き寄せた。

 「俺は平気だ。庭が気に入ったなら今度は良く見える昼間に来よう。でも今日のところはこれくらいにしないと、千紗子が風邪を引いてしまうぞ。」

 「はい。」

 耳元で柔らかく諭されて、千紗子は素直に頷いた。


 アプローチの先には趣のあるアンティークな木製の扉が有り、可愛らしいクリスマスリースが掛かっている。その脇には小さなボードが置かれていた。そこには『un sourire』と書かれてある。

 「アン、ソーリ…」

 「アンソリール。フランス語で『笑顔』だ。」

 微笑みながらそう言うと、一彰は目の前の扉を押し開いた。

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