Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
狭い廊下を抜け、部屋に一歩踏み入れた途端、千紗子の目にその景色は飛び込んできた。
赤々と燃えている薪ストーブ。
壁際に置かれたアップライトのピアノ。
天井の梁からぶら下がっている沢山のオーナメント。
そして、オープンサッシの全面ガラス張りの窓の外には、あの庭が見えていた。庭の中央には立派なモミの木が立っていて、クリスマスの飾りつけが施され、電飾がキラキラと光っている。
部屋の入り口で声もなく見いっている千紗子に、一彰が声を掛けた。
「ちぃ、そんなところに立ってないでこっちにおいで。」
一彰は部屋の一番奥、ガラス張りの窓の前に置かれた丸いテーブルの前で千紗子を呼んでいる。
千紗子は、吸い寄せらせるようにそちらへ足を踏み出した。
一彰は自分の隣にやってきた千紗子に、椅子を引いて座らせる。
その動作の間中、ずっと庭のクリスマスツリーにくぎ付けになっている千紗子を見て、一彰は思わず小さな笑い声をもらした。
「気に入った?」
「はい…物語の中、みたいです……」
そう言いながらも、千紗子はやっぱりこの部屋と庭の景色に見惚れたままだ。