Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
三人の会話を聞いている千紗子には、分からないことだらけだ。
なんとなく会話に入って行けず、少しだけ身の置き場がないけれど、そこは敢えて割り込んでいくところではないような気がして、千紗子は黙っていた。
「ちぃ、実はオーナーシェフの柾さんは、俺の母方の従兄なんだ。」
「え!従兄なんですか?」
「そう、母の兄の息子、という関係で、俺にとっては兄のような存在なんだ。」
「一彰が子どもの頃、よくうちに来て遊んでやったよな。」
「良いことも悪いこともぜんぶ柾兄さんから教わったような気がするけどな。」
「はははっ。」
二人の会話を目を千紗子は白黒させながら聞いている。
「実咲ちゃんは、二人の長女なんだ。今は高校一年生なんだっけ?」
「ああ、もう十六になるな。あと十二の長男と十歳の次女もいる。」
一彰は柾から千紗子に視線を移して、口を開く。
「この店は日祝は予約を取っていないんだ。だけど、俺が無理を言って開けて貰ったんだよ。」
「そうだったんですね…ありがとうございます。」
目の前の天道夫妻に向かって、千紗子が頭を下げと、恵実が慌てて手を振りながら口を開く。
「いいのいいの。普段からお客様からご予約を頂いた時だけ開けている、気ままな店だもの。今日だって、一彰君が家で食べる食事のついででいいって言ってくれたから、申し訳ないけど我が家のクリスマスメニューとほとんど同じものなのよ。だから気を遣わないで、親戚の家に遊びに来たと思ってゆっくりしていってね。」
「「ありがとうございます。」」
千紗子と一彰のお礼の言葉が重なり、一瞬の静けさの後、四人で笑い合った。