Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 実は千紗子は、イギリス文学が大好きで、子どもの頃に読んだ『ナルニア国物語』や『指輪物語』は今でも時々読み返すし、『ハリーポッター』も全巻本棚に揃っている。

 「きっとちぃは気に入るだろうと思ったんだ。好きだろ?ケルトとか魔法とか。イギリス文学も。」
 
 「どうしてそれを……」

 話したことなどなかった自分の趣味を当てられて、千紗子は驚くと同時に恥ずかしさから頬が熱くなっていく。
 秘密、というほどではないが、あまり人にこの趣味を話したことはない。

 「どうしてって、千紗子の本の中にナルニアとか指輪とかが揃ってたし、マグカップはピーターラビットだろ?いいよな、英国式の庭って。ああ、あと大学のときは英文学専攻だったんだろ?」

 千紗子は絶句した。
 一彰の口からスラスラと出る単語は、どれも一彰に話したことのないものばかり。

 目を瞬かせて口をポカンと開けている千紗子に気付いた一彰は、ハッとした後気まずげに目を泳がせた。

 「あぁ…、えっと、英文学専攻だというのを知っているのは、一応俺は千紗子の上司だからで、あとは…一緒に暮らしていたら普通分かることだろ?」

 千紗子の胸が、きゅんと鳴る。

 (裕也は、私がイギリス文学が好きなことを全然分かっていなかったわ……)

 一年半も暮らした元恋人よりも、同棲一週間の一彰の方が千紗子のことをよく知っている。それは彼が普段からどれだけ千紗子のことをよく見ているか、ということを物語っていた。
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