Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 ソファーの背に身を沈めるように寄りかかると、体の重さを感じる。

 (わたし…またこうしてここでお世話になってる…)

 これ以上雨宮を煩わせないと心に誓ったのに、こうしてここに舞い戻っている自分が情けなかった。

 (雨宮さんにお礼を言ったら、今度こそホテルに行こう。)

 気力を振り絞って、鉛のように思い体をソファーの背から引き離した時、雨宮が戻ってきた。

 「無理せずにソファーに寄りかかって。ミルクティ、熱いから気を付けろな。」
 
 そう言って雨宮が目の前に差し出したマグカップを、千紗子は両手で受け取った。

 (今朝も同じようにここでこのマグカップを受け取ったわね…あれから数時間しかたってないのに、もう何日も前のことみたい…)

 「今日二度目だな。ここで一緒に何かを飲むのは。」

 「えっ?」

 千紗子は自分が思っていたことと同じようなことを雨宮が言って、びっくりした。

 「朝はココアだったけどな。」

 「…いただきます。」

 ふぅっと息を吹きかけて紅茶を飲むと、トロリとした甘みが、口から喉にすべり落ちていく。そのまま胃に落ちると千紗子の体がポッと温かくなった。
 
 「甘い…」

 「ああ、ハチミツを入れたんだ。嫌いだったか?」

 「いいえ、とても美味しいです。ありがとうございます。」

 「そうか。」

 雨宮は眼鏡の奥の瞳を、柔らかく細めた。

 (雨宮さんは紅茶みたい…)
 
 ストレートでは渋みと香りを味わって、ミルクを入れればマイルドに、砂糖やハチミツを入れるとその甘さが疲れた体に心地良い。

 柔らかな温かさで癒してくれる、彼にはそんな紅茶みたいなところがあると、千紗子はなんとなく思った。
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