Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 雨宮と就寝の挨拶をした後、寝室に入った千紗子はダブルベッドの上に一人で横たわる。
 どうやらシーツや毛布は新しいものと交換してくれていたようで、サラリとした肌触りが心地良い。
 千紗子は布団の間に体を滑り込ませて、暗い天井を見上げた。

 一人になると、どうしても裕也のことを考えてしまう。

 (『地味女のお前なんかと結婚しなくて良かった』か……)

 裕也が放った言葉が、棘のように千紗子の心に刺さって抜けない。

 (私なんかと結婚しようと思ったことを、裕也は後悔したのかな…だから、他の人と…)

 そこまで考えたところで、千紗子の瞳がじわりと熱を持つ。
 熱を持った瞳に水膜が張るのはあっという間だ。

 (幸せだったのは、私だけだったのね……)

 やりきれない悲しみが、千紗子の胸を侵食する。
 枕の上に涙が一滴すべり落ちた。

 両目から次々に溢れ出る涙を拭いもせずに、千紗子はただ暗い天井を見つめ続けた。

 
 時がどれくらいたっただろう。
 涙は止まったけれど、どうしても寝付けなくて、千紗子は体を起こした。
 
 (お水でも飲んで、寝なおそう。明日は仕事から、気持ちを入れ替えなきゃね。)

 足音を立てないように、静かに寝室を出た。
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