24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「それはあなたの方でしょう? 契約の代わりに、保身ばかりで相手のことなどお構いなしの、浅はかな考えを改めるいい機会を差し上げます。……そろそろお引き取り願えますか? 未来のない話に付き合うほど、私も暇ではないもので」
終始冷静に、かつ丁寧に話す立花を前に、拓也はどう足掻いても太刀打ちできず、肩を落として店を出る。
立花は彼を見送ると、店舗の奥から塩を持ち出し、店頭に撒いた。
――その週、金曜19時前。
立花は、伊鈴よりも先に仕事を終え、ESFOODSの社屋前に車を停めて待っていた。
錫色(すずいろ)の着物と、濃藍色の角袖コート姿の彼は、虎ノ門の街でも人目を引く。
ポケットに手をしまってただ立っているだけなのに、出入りする女性社員から熱視線を送られる始末だ。
(着物姿の男が、そんなに物珍しいのか?)
遠巻きにしている女性たちにふんわりと微笑むだけで、無自覚のうちに相手を虜にしてしまうのだった。
「煌さん、お待たせしました」
「お疲れ様。冷えないうちに乗って」
社屋から小走りで出てきた伊鈴の肩を抱き、助手席へエスコートした。