24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「お客様」

 店員から、泣いている客がいると聞いた立花は、店の奥から様子を見に出てきた。
 もし商品や接客等に不都合があったなら、真摯に謝罪しなくてはいけないと思ったのだ。

 立花は丁寧に声をかけ、伊鈴のテーブル脇に立つ。
 すんすんと鼻をすすりながら、顔を覆って泣く女性客を前に困惑することなく、背筋をぴんと伸ばして姿勢を正し、両手を身体の前で軽く組んだ。


「お客様、いかがなさいましたか?」

 もう一度声をかけると、ゆっくりと伊鈴が目元を覗かせる。


「すみません。ご迷惑をおかけして……」

 数分前に来店した伊鈴を見た時は、最近多い流行りもの好きなOLだと思っていた。
 雑誌やテレビの取材を受けるようになってからというもの、イートインスペースや店内で写真を撮り、SNSに掲載する客も増加していて、立花の頭を悩ませているのだ。
 ご贔屓筋からの厳しい意見にも理解は示しつつ、せっかく来てくれたのだから、そのすべてを無下に禁じるつもりはない。

(……儚いな)

 だが、閉店1時間前に飛び込んできた伊鈴も、その類だと思っていたので、儚い涙を光らせる泣き顔にハッとさせられた。

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