24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~


「お話させていただいてもよろしいでしょうか?」
「……はい」

 伊鈴が見惚れていると、立花は右手で軽く褄を取り、椅子に座った。

 目の高さが揃うと、お互いにまた見つめ合う。
 いつの間にか伊鈴の涙は止まり、立花は相変わらず不思議そうに様子を窺っている。

(……なんだろう? やっぱり迷惑だって怒られるのかな。誕生日にひとりで過ごすなんてやめておけばよかった)

 茶色の半襟が覗く襟元に視線を落とした伊鈴は、その色気にドキッとした。

(きっと、寂しいからよ。それに、最近は拓也以外の男の人と、プライベートで話す機会もなかったし)

 それなのに、反応を示した胸の音が信じられない。
 まっすぐに清いまなざしを向けられ、伊鈴は立花の顔をますます見れなくなった。


「少し、失礼しますね」

 ほどなくして、カップルが席を立ったので、立花が見送りに店頭まで赴くと、また伊鈴の元へ戻ってきた。

 それでも、まだなにも言わない立花に、今度は伊鈴が不思議そうに視線を返すと、立花はふっと笑みを浮かべた。

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