24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 おそらく、他に客がいなくなったので注意を受けるのだろう。歴史ある店は、客を選ぶこともできるはずだ。
 にこやかな立花の微笑みを前に、伊鈴は姿勢を正した。


「申し遅れました。私は当店の店主をしております、立花と申します」
「こちらこそ美味しく頂戴しております。十河と申します。この度はご迷惑をおかけしました」

 折皿と目を合わせるように、頭を下げる。すると、頭を上げてほしいと、立花が言った。


「十河さん、今日はお時間ありますか? 場所を変えて話したいのですが」
「…………」

(そんなに困らせるようなことをしてしまったのかな)

 とはいえ、金曜の夜にひとりで来た女が、突然隣で号泣し始めたら、お客が帰ってしまう可能性がないとも限らない。さっきのカップルだって、自分のせいで帰ってしまったのだとしたら?

 伊鈴はどう答えるべきか、考えを巡らせる。
 どんな理由であれ、失恋した日に初対面の男性とふたりで出かけるのは、軽率だと思ったのだ。

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