24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
今日も変わらない一日を過ごすのだと思っていた朝、拓也の裏切りを知った昼、友人との関係に悩んだ昼下がり、明かりのない絶望の中にいるような気分だった夕方……。
(今頃、由紀は拓也とデートしてるんだよね……。いつ話そう。なんて言ったらいいんだろう)
そして、せめて誕生日くらいはと立ち寄った老舗和菓子店で、まさかの号泣。
(なにやってるのよ、私)
あげく、迷惑をかけたからと、店主に連れ出され、これから至極丁寧に注意を受けるのだ。
もしくは、今後店には来ないでほしいと、あんこ好きの自分にとって痛烈な言葉をもらうのかもしれない。
最悪の誕生日は、やっぱりなにをやっても最悪でしかないと、伊鈴は沈んだ気持ちを噛みしめた。
――二十時過ぎ。立花と連れ立って店を出た。
店員にはやたら深々とお辞儀をして見送られ、迷惑をかけたはずなのに妙な気分だ。
それに、いつの間にか降り出していた小雨の下、一張の鉄紺色の番傘の中で初対面の立花と歩くことになってしまった。