24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「十河さん、お食事は済まされましたか?」
「いいえ、まだです」
「では、なにか食べながら話しましょう」
怒っているはずの立花は、店を出ても丁寧だ。
多くの人でごった返す銀座の街で、彼は自然と車道側を歩き、すれ違う人の傘の先が伊鈴にぶつかりそうになると、わずかに番傘を傾けて遮ってくれる。
「濡れていませんか?」
「っ、は、はい……大丈夫です」
「あと少しで着きますので」
(きゅん、じゃない! これから怒られるのに!)
立花のやわらかな声色と優しい微笑みに胸の奥がざわめいて、明るい音を立てる。
そして、抹茶色の羽織からほんのり香る白檀の匂いが番傘の中に漂い、ふと気を抜いてしまいそうで……。
「わっ!!」
後ろから小走りで追い越して行ったサラリーマンのビジネスバッグで背中を打たれ、前方によろけた伊鈴が番傘からはみだす。
なんとか転ばずに済んだのは、すかさず立花が手を伸ばし支えてくれたからだ。