24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「お客様にそんなことはしません。ただ、泣いているのに雨の銀座をひとりで歩かせたくなかっただけです。さぁ、お好きなものを食べてください」
忙しない自分の心中に比べ、立花の落ち着き払った言動は別の時間軸にいるようだ。
それに、泣いていたせいで気を使わせてしまって、一層申し訳なく思う。
(かといって、今帰ったら失礼になるし……)
注意されるわけではなく、立花の心遣いで食事に誘われたと知った伊鈴は、途端に気まずくなるばかりだ。
鮭や真さばの握り、いくらの軍艦巻など、旬の鮮魚が檜のカウンターに並ぶ。
好きなものをなんでもと言われても決めきれずにいたら、立花がコースで頼んでくれたのだ。
どれもこれも美味しそうだけど、伊鈴は遠慮して少しずつ箸をつけた。