24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「その前に、私から。改めまして、弊店の五代目をしている立花 煌と申します」
「十河 伊鈴です。製菓材料メーカーのESFOODSで勤務しております」
伊鈴が話すと、立花はわずかにホッとした表情を見せた。
「……弊社をご存じでしょうか?」
「もちろんです。実は、勝手ながら店の者に取引先の方と食事に行くと言って出てきたもので、そう遠くないのかなと」
「あぁ……なるほど」
(だから、あんなに丁寧にお辞儀をされて見送られたのか……)
不思議に思っていたけれど、それなら納得もいく。
「ところで、今日うちにいらしたのは理由があるんですか?」
立花は、くいっと日本酒のお猪口を煽り、徳利からまた注ぐ。伊鈴は湯呑みを両手で包みながら、間を取った。
(誕生日だからなんて言ったら、立花さんはもっと気を使うだろうな。それに、誕生日なのにおひとり様とは思われたくないし……。彼氏とデートじゃないのかって察されるのも切なすぎる)
言わなくてもいいことは、隠しておくべきだろうと決めて、立花を見る。
白雲丹の軍艦をひと口で頬張るその横顔は、何度見ても綺麗だし、着物姿で食べる様子はなんとも粋だ。