24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
日本酒を飲んで熱くなった立花は、着物の胸元から扇を出してそよそよと動かす。
墨色の空にぼんやりと輝く満月と、点在する蛍が描かれた幻想的な柄に、伊鈴の目が止まった。
「お召し物も小物も、素敵ですね」
「ありがとうございます。最近仕立てたばかりなので、お褒めいただけて嬉しいです」
きっとどれも一流品なのだろうと伊鈴は思った。この鮨店といい、身に着けているものといい、立花の上品さは本物だと感じたからだ。
ゆっくり食事をしていたら、ラストオーダーの時間だと大将に声をかけられた。
伊鈴も手首を返して小ぶりなサイズの腕時計を見ると、ちょうど21時半を過ぎたところだ。
「まだ入りますか?」
「いえ、さすがにもうお腹いっぱいです」
カウンターの向こうで接客してくれた大将や立花に勧められるままに、あれこれと食べてしまった。
シルエットの緩い服を着ていてよかったと思うほど、触らずともぽっこりと胃が出ていると分かる。