24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
スタッフが、ソルティドッグとロックグラス、ブランデーボトルを運んできた。テーブルの端には、クラッシュアイスが入ったアイスペールが置かれる。
立花は慣れた手付きでグラスに氷を入れ、ブランデーを注いだ。
「乾杯」
伊鈴はグラスの縁に付いた塩を一緒に含み、切なさを紛らせる。
誕生日に一緒にお酒を飲む相手がいてくれてよかった。
素敵な老舗和菓子屋の五代目と、こうして過ごせるなんてラッキー以外の何物でもない。
そうやって無理に前向きな考えを巡らせるのも、余計に悲しい。だけど、少しでも現実に触れると、また泣き崩れてしまいそうになる。
「十河さん?」
夜景が、さらに滲んできた。
立花の問いかけにはすぐに答えられず、伊鈴は曲げた指の背でさりげなく目尻を抑えた。
今夜、気心の知れた友人といたのなら、愚痴って喚いて、悪態もついていただろう。
今だって、本当は大声で叫びたい気分だ。わー、でも、ギャー、でも、バカヤローでもなんでもいい。とにかくスカッとしたくてたまらない。